巨神ゴーグの「リアル」
故城 礼
はじめに
巨神ゴーグという作品は、最近よくいわれる分類ではいわゆる「スーパーロボット」の範疇に入る作品である(この「スーパー」と「リアル」の区別も多分に恣意的で議論の余地があるが、ここではふれずにおく)。仁王立ちの巨神ゴーグの姿は、「これぞスーパーロボット!」ともいえる、非常に絵になる美しさがある。しかし、作品自体に目を向けるなら、この巨神ゴーグという作品は非常に「リアル」な物語と言えるのではないだろうか。
第一話の地球儀と手
第一話、サブタイトルの次に突然あらわれる実写の地球儀とそれを回す手。それとともに始まる悠宇の父である田神博士のナレーション。放映当時小学生であった筆者は、この演出にかなりショックを受けた。そのまま主人公の田神悠宇がニューヨークに降り立つシーンへとつながるこの演出は、この物語のスタートが極めてリアルな世界から始まることを物語っている。実際、オウストラル島でゴーグと出会うまでのこの作品は、よく出来た冒険物語ではあるが決してロボットアニメのそれではなく、むしろ「世界名作劇場」などの雰囲気に近いと言えるかもしれない。このように丁寧に描かれた世界だからこそ、ゴーグ ―人間の力をこえた「巨神」― の存在がより際立つと言えるだろう。
兵器描写の「リアル」
そして「神々のいる島」オウストラルへと舞台がうつるとともに、悠宇たちとGAILとの間の戦いも本格的な戦争の様相を呈してくるが、この戦闘シーンでの各種兵器の描写がまたリアルである。おそらく、メカデザインの永野護氏の趣味嗜好が前面に押し出された結果だろうが、GAIL側の現用兵器を徹底的にリアルに描写することで、対照的に現用兵器を軽く上回るゴーグの「力」を印象付けることに成功していると言えるだろう。
ちなみに巨神ゴーグのメカニカルデザインは、現用兵器等のデザインを永野護氏が、異星人のメカ等を佐藤元氏が担当していたとのこと。
この「リアルな描写」は、たとえばGAILが正式採用している兵器の選定にも影響している。たとえば、劇中では「ゴーグブーメラン」になったり、オドンネル大佐の棺桶になったりといいところがなかったハリアー戦闘機(おそらく米海兵隊で採用されているAV-8Bであろう)は、
- V/STOL(垂直/短距離離着陸)能力をもっていて、前線での柔軟な運用が可能(空き地に鉄板を敷いただけの前線基地でも離着陸できる)
- 充分な対地攻撃能力を持っていて作戦を選ばない(単一機種で対地対空両方に対応できる)
等の点を評価されて正式採用されたであろうと容易に想像がつく。その他、主力戦車の「メルカバ」や対地攻撃ヘリ「バッソー」等も同様の理由で登場したであろうと思われる(このあたりの兵器については、いずれ別項を設けて考えたいと思う)。このような細部へのこだわりが、視聴者がスムーズに「巨神ゴーグ」の世界へ感情移入する助けになっているといえるのではないだろうか。
オーバーテクノロジー
このように、実写の地球儀→ニューヨーク→GAILと「リアル」な世界が緻密に描かれるほど、対照的に異星人文明の「らしさ」が際立つことになる。それが如実に表されているのが、GAILオウストラル支社に進軍するラブルガーディアンと、それに対峙するメルカバ戦車隊のシーンであろう。ラブルガーディアンがいとも簡単に戦車隊を蹴散らしてしまうシーンに象徴される異星人のテクノロジーの圧倒的な優位性は、地球側の兵器がそれまで非常に丁寧に描写されてきたことでさらに説得力をまして実感される。
しかし、一見無敵かとおもわれたラブルガーディアンも、弱点であるクビの付け根を狙い打たれるとあっけないほど簡単に破壊されてしまう。これは、いくら進歩しているとはいえ、異星人のテクノロジーも所詮科学技術に過ぎないという「リアル」さを表しているといえるかもしれない。
|