結晶 (2/5)
(何十何百と言う金など持っているはずもない私にしてみ
れば、かえって好都合ではあったが。)
店中に所狭しと並べてある品物を見ながら、妙に懐かし
い気持ちに捕らわれた。
はじめのうちは、この手の店にいるときによくある感情
だと思っていたのだが、それにしても懐かしすぎる。何気
なく手に取った物一つ一つが、いちいち私の心の琴線にふ
れ、なかなか元のところへ戻すことができない。
そんな具合で店の商品を片っ端から見定めているうちに、
すっかりよその店にいるのもわすれて、曾祖母の家の物置
きにいるような気分になっていた。
気がつくと、店の外はすっかり暗くなっていた。どれく
らいの時間が経ったのかはわからないが、店に陳列してあ
る商品はまだ半分も見ていなかった。
さすがに、そろそろうちに帰ろうかと思ってふと目線を
あげると、店主らしき初老の男と目があった。余りにも夢
中になっていたので、それまで完全にその男のことを忘れ
ていた。
こんなに長居したのに、なにも買わないのはまずいと思
い、なにか買おうとしたが、目があったから慌てて買うと
言うのもいやらしい気がする。
結局、あいまいな会釈をするだけだった。
初老の男は、私の会釈にもほとんど表情をかえなかった。
まるで、小学校の先生に立たされているような気分だった。
突然、初老の男が口を開く。
「何か、お気に入りの品は見つかりましたでしょうか。」
気まずい沈黙が破られ、ほっとした私は何とか返事をす
ることができた。
「ええ。この一つが絶対に欲しい、というのではないので
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