bo-bo-記 rec.0108 01.03.25



梅子の春」
  


 春はオラをダメにする。逃げても逃げてもダメな自分が追っかけて来る。そんな気がする季節です。街の中には夢膨らませた若者が増え、電車の中では仲のよいカップルが恋にウットリしている。テレビではアノ評判の番組が終わり、鳴り物入りのアノ番組が始まる。書店では新刊書がこれでもかと並び、レンタルビデオ屋では新着ビデオが恐ろしいくらいの数入荷し、これまた恐ろしいくらいの勢いで借りられていく。いろいろな新しいモノゴトが街のあちらこちらで動き始め、そして動き始めたモノゴト達がなんとかカタチにしようとそれぞれの場所で蠢きます。毎年春になると決まって目にする光景なのですが。病み上がりの今年は一段と身に凍みて来ます。ひとりポツンと取り残されていく。オラは今どこに居て、何をしているのだろう。二人の娘は4月から始まる高校生と言う枠組みに期待と不安をかかえ、それぞれの春を楽しんでいます。でも歳を取って、貧乏で病気がちなオラには、未来に対してあまり明るい材料が見つかりません。去年一年、“書く”という作業をしながらいろいろな事を自分のココロの中で整理をつけたツモリだったのですが、どうやらツモリだったようです。何も変わっちゃいません。ダメな奴はいっしょうダメで終わるのでしょうか。この一年、いったい何をしてきたのだろう。春風に吹かれながら壊れた涙がこぼれます。なんとかしないと本当に壊れてしまうぞ。そんな中、ズブズブと深みにはまって行く自分に追い打ちをかけるように、家で飼っている二匹の猫の片方が“終の棲み家”に入りました。腎不全で医者から、もってあと2カ月、そう先刻された猫の梅子はご飯もあまり食べなくなり、水もあまり呑まず、ただミャオミャオと鳴くばかり。以前は身軽に飛び乗っていた台所の上も、今ではヨタツキながら縁にしがみつきやっとのことでよじ登っています。静かに休む場所も光が入るところを避けて、だんだん暗い所に場所を移して行き、今では押し入れの中に入ったままあまり出て来てはくれなくなりました。お願いだから、いつかのようにお日様に干してある布団の上で日なたボッコをしてほしい。ノンビリあくびをしてほしい。ゴロゴロとそこいら中を毛だらけにしてほしい。。。。。。。

 苦しいと思うのです。ツライと思うのです。怖いと思うのです。だって、死を受け入れようとしているのですから。もの凄いことを彼女はしているわけです。そんな梅子に比べればオラの悩みなんぞホンの小さなことなんです。だってオラは今すぐ死ぬ ことはないのだから。でも、オラはバカだから梅子の前でシクシク泣くばかりで何も出来ないのです。というよりわからなくなってしまったのです。何をしたらいいんだろう。何をすればいいんだろう。生活が困窮していくのに、ただ立ちすくみ泣いてばかりいる中年はあまりにもカッコ悪いし、みっともない。去年はとにかく仕事が出来るようになるまでキチンと身体を直そうと頑張りました。そしていろいろ頑張って、まあ以前のようには行かないけれど、細君と子供達とほんの近しい友人に助けてもらって、なんとか動ける身体になりました。そして一年が経ち春が来ました。そしたら今度は仕事がなくなっていました。経った一年の月日が、高校に入る娘の授業料も払えないくらいの有り様になっていました。情けない男です。情けない男ですけど、生きています。でも若い梅子は死んでいくのです。まだ6年しか生きていないのに死んでいくのです。動物は立派です。キチンと自分を受け入れて、いま何をすべきかちゃんとわかっています。でも人間はどうでしょう。いま何をすべきで、何をしていくことが自分達の未来につながって行くのか、それをわかっている人っているのでしょうか。もちろん、わかったフリやわかっていると思い込んでいる人はいると思います。でも、それはやっぱり思い込みや自己暗示のレベルだと思います。もっと確信めいたモノがほしい。人生、確信犯でありたい。そう思います。ムリかもしれないけれど・・・・・・・。

 春です。頭が壊れそうです。訳が分からないことをだらだらと書いています。でも、こうしているあいだにも梅子の身体は“死”に一歩一歩近づいて行くのです。誰かに止めてほしいけれど誰にも止められないのです。

 春です。暴力の夏、感傷の秋、孤独の冬、そして狂気の春です。あまりディ−プにならずに梅子の“死”を見届けてあげたいと思います。たぶん梅子にとっては最後の春になるでしょう。そして、その日が来たら。庭に咲く梅の花の下にそっと埋めてあげようと思います。

梅子の梅、梅子の春。

消し去ることのできない出来事が。
またひとつ。
ふえてしまいそうです。

 

 next rec.

 

(C)ChildishWorks&PlayHouse 2000, All rights reserved.

 

HOMEProfileActivityWhat's bo-bo-bo-bo-recordMailmagazine