bo-bo-記 rec.0117 01.04.24



映画感想文『あの頃ペニー・レインと』」
  


 我が家の娘たちは長女が17歳、、次女が15歳。ともに高校一年生。思春期真っ盛りである。そんな彼女たちと、観ていて胸がキュンと切なくなり、思わず自分の胸をグッとつかみたくなる青春映画。『あの頃ペニー・レイン』とを観た。場所は新宿の武蔵野館ビル内にあるシネマ・カリテ。この映画館は世界中の小品ながらも楽しい佳作を、よくかけてくれる。我が家では恵比須のガーデンシネマと並び、お気に入りの映画館の一つである。『フルモンティ』『リトル・ヴォイス』『アンジェラの灰』『僕たちのアナ・バナナ』等、みなこの映画館で楽しませてもらった。ありがとう。僕は新宿という町は好きじゃないのだが、この映画館だけは別 だ。いい映画を観させてくれる場所を嫌いになれるわけがない。今回もまた、こちらを幸せな気持ちにさせてくれる映画をかけてくれた。『あの頃ペニー・レイン』とである。製作・監督・脚本はあのキャメロン・クロウ。あの二枚目ポコチン俳優のトム・クルーズを立派な演技派にみせてくれた『ザ・エージェント』(’96)の製作・監督・脚本、『セイ・エニシング』(’89)『シングルス』(’92)の監督・脚本。最近では『ワイルダーならどうする?』という−『お熱いのがお好き』(’59)『アパートの鍵貸します』(’60)『あなただけ今晩は』(’63)等の監督−ビリー・ワイルダーへのインタビューを試みた本を出している。皮肉屋のワイルダーに怯むことなく堂々とやり合っていて、ワイルダー・ファンとしてはたまらない一冊だ。もちろんそうでない方にもとても面 白い本になっていますので一読をお薦めしておきます。 キャメロン・クロウは16歳で音楽雑誌『ローリング・ストーン』誌の史上最年少記者としてキャリアをスタート。この映画はそのキャリアをスタートさせる寸前の頃、そのころの彼の自伝的要素の濃い物語りになっている。監督のキャメロン・クロウは僕より三つ上の1957年生まれ。舞台は1973年のロック全盛のアメリカ。主人公は15歳のロック少年ウィリアム。ちなみに僕は当時13歳。詰め襟の制服に坊主頭で愛知県にある片田舎の高校に通 っていた。その頃聴いていた音楽はサイモント&ガーファンクル、レッドツェッペリン、イエス等、この映画の挿入歌と重なりそれだけでもうウルウル(泣)。

 ウィリアムは母と姉の三人暮らし。飛んでる姉はある日、家を出る。別れ際に姉が言う、「ベッドの下を覗いてごらん、自由があるから」

そこを覗くと、隠れていたのはロックの名盤たち。ストーンズ、ディラン、etc.ロックの洗礼を受けたウィリアム少年はロック評論家をこころざすことに。ある日、コンサート会場でバンドの“入り待ち”をしていると、そこへジャニス・ジョップリンばりの格好をした“追っかけ”の少女が現れる。

「名前は」
「ペニー・レインよ」
可愛い二人のボーイ・ミーツ・ガールである。運よく雑誌社から原稿の依頼があり、少年は中堅ロック・バンドのツァーに参加することになる。バンドのメンバーでリーダーのラッセルに恋心を抱くペニー・レインももちろん同行。ペニーとバンドとロックを愛する少年ウィリアム。自由と音楽と人間を愛する少女ペニー。自分のことしか考えない、才能あるポコチン男ラッセル。そして少年を心配する母親、明るくエッチで薬好きなグルービーたち、“仲良し”と“いがみ合い”を繰り返すバンドの連中、記事の催促しかしない雑誌社の大人たち。それらが少年の心の中をめまぐるしく通 り過ぎて行く。いつしか少年は疲れ果て、見知らぬ空港のソファーでグッタリ。身も心も真っ赤なソファーに横たえてユックリと沈んでいく・・・。そこへ偶然家を出た姉が通 りがかる。しばらく会わないうちにいつしかスチュワーデスになっていた姉。飛んでる女が家を出て、本当に飛んでる女になっていたのだ。

「いまのこの子(弟)には、わたしが必要みたい」

姉は弟にそっと手をさしのべる・・・・・・・・。

 話はざっとこんな感じだが、とにかくキャメロン・クロウの演出がイイ。胸キュンのツボを心得ている。バカみたいに語り過ぎず、ほどよく緩急があり、ロックの歌詞のような短くてイイ台詞をところどころにちりばめてある。そして切なく落とすところはキュンと落とす。このキュンと落とすところがニクイ。日本人にはとうていできない技がそこにはある。僕はアメリカ人のこういうセンスに拍手を送りつつも、ものすごい嫉妬を覚えてしまう。なぜ僕たちにはあのセンスがないのだろうか・・・・。僕がやろうとするとキット泥臭くなってしまいキュンがギュンになってしまうだろうキット。人々が絶対一度は通 るあの胸キュンの頃。全てが輝いて見えるあの頃。振り返っても、もう二度と帰ることはないあの頃。人間はあの頃を美化しながら後の人生に折り合いをつけて生きていく。悲しいかな・・・。主演のウィリアム少年を演じるのは新人のビリー・クラダップ。難しい役どころをごく普通 に好演。同姓の男がみても爽やかで可愛い。ペニー・レインにはあのゴールディ・ホーンの娘ケイト・ハドソン。小悪魔敵で可愛い不思議な魅力は母親譲り。この先が楽しみな二人である。音楽はナンシー・ウィルソン。サントラ盤を買おうとしたら売り切れだった。もちろんプログラムも売り切れ。イイ映画の証拠である。嬉しい。終わった後、娘たちに聞いてみた。

「どうだった?」

「よかったよ、せつなくて。胸キュンだね」

映画の主人公と同じ時期を現在過ごしている彼女たちにとっても胸キュンは胸キュンらしい。この胸キュンを僕は他の言葉でいいたいのだが見当たらないのが悔しい。この世の中で胸キュンという言葉を初めに使ったのはどこの誰だろう。今度ゆっくり調べてみよう。
ではでは。

 next rec.

 

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