bo-bo-記 rec.0123 01.06.13



親娘のカクシツ」
  


◎《朝からゴーグルな奴》

それは、朝早くのことでした。

「おとうさん」
「なに?」
「ゴーグル持ってる?」
「持ってるけど、どーするの?」
「体育の水泳の時間に使うから貸して」
「いいよ」

 洋服ダンスを開けると忘れられた黒いゴーグルが下着の中で悲しそうに転がっていました。数年前に腰痛を治そうと水泳を始めたときに買ったものです。結局、水泳すらもできない腰になり果 ててしまい。ゴーグルの存在は僕の記憶から消え去ろうとしておりました。そのゴーグルが久しぶりに日の目を見るのです。良かった良かった。僕は下着の中に埋もれていたゴーグルを拾いあげ娘(長女)にわたしました。

「ありがとう」

娘は引ったくるようにしてそれを僕の手から奪うと鏡の前に行き、おもむろにポケットから競泳用のスイミングキャップを取り出し、ゴーグルと一緒に身体につけました。パジャマにゴーグルにスイミングキャップ。オマヌケです。理解しがたい格好です。家の娘は何がしたいのか僕にはサッパリわかりません。そしてその姿を鏡に映すこと、
1分
2分
3分
4分・・・・
10分・・・・
20分・・・・・
30分・・・・・・

オイオイなんということだろう、この娘は。頭がおかしくなってしまったのか。いくらそんな姿を鏡に映したって競泳用のゴーグルとキャップが似合うようになるわけないじゃないか。だって競泳用のゴーグルとキャップだよ。おまけにパジャマだよ。そんなもの似合う方がおかしいよ。この娘は鏡の前で何を納得しようとしているのだろうか。そんな無駄 な抵抗をして鏡の前に立っていること自体、いちばん格好悪いことを彼女はまだ知らないらしい。かわいそうに。わが子ながら不憫になる。オヨヨヨ・・・。こういったことを言ったり書いたりするから、また娘に嫌われる。オヨヨヨヨ・・・。とにかく何か注意をしなくては、

「オイ」
「なあに」
「何してるの」
「別に」
「別にって、お前ね、30分はそこにいるんだよ、ゴーグルとスイミングキャップとパジャマで30分だよ」
「それがどうしたの」
「どうもしないけど、バカになったかと思って、父は心配しちゃった」

ブブブビビビビーーーーー!

返事のかわりにオナラで返された・・・悲しい・・・オヨヨヨヨ・・・・・

◎《朝からお腹ポンポンな奴》

再び朝早くのことでした。
その日は珍しく家族四人で食卓につき、みんな眠い目をこすりながら納豆とみそ汁を口に運んでいました。

「ごちそうさま」

いつもは朝から三杯は食べる娘(長女)がこの日は一杯で箸を置いたのです。
ど、どうしたのだろう、飯の中に石でも入っていたのだろうか。みんなが不思議がっている様子が空気となり食卓を包みます。 デモ、そんな空気はどこ吹く風。長女は、またまた鏡の前に立ち。今度はお腹をポンポン、ポンポンと軽くたたき始めました。
《どうしようかなー、最近お腹でちゃってるのよねー、どうしたら引っ込むかしらんー》
そんな声が聞こえてきそうであります。
この長女、顔は可愛いのだけれど、高校生なのに赤ちゃん腹でズン胴なのです。つまり、くびれているハズの場所がくびれていないのです。
長女以外の僕たち三人(僕、細君、次女)は笑いをこらえるのに必死です。
そんな時間が、
1分
2分
3分
4分・・・・
10分・・・・
20分・・・・・
30分・・・・・・

長女「トイレ行こうーっと」

一体全体なんだというのだこの女(長女)は、鏡の前でオ腹ポンポンが30分だよ30分。

 僕「あいつはあれかなー、お腹たたけばお腹が引っ込むとおもっているのかなー」
次女「ご飯食べなきゃ痩せるよ、あと甘いもの食べ過ぎ」
 僕「それにあいつの場合、赤ちゃん腹じゃないか」
次女「カッコ悪いよネ、あれじゃ何着ても似合わないよ」
 僕「もともと服のセンスがないしなー」
次女「顔はかわいいのにもったいないよネー」
 僕「(細君に)おまえはどう思う」
細君「鏡見てても痩せないんだから、その時間使って運動すればいいのに」
 僕「ごもっとも」

そのときトイレの方角から爆音が、

ブビビビーーーッ!!

長女のオナラである。
高校一年、ダブりの17歳。現在恋愛中。 お腹ポンポン、オナラをブビビビーーーッ。
こういうことを言ったり書いたりするから父は嫌われる。オヨヨヨヨ・・・・。

 

◎《そして鏡の前で三時間な奴》

トイレからでた娘(長女)はそのまま自分の部屋にかえりお着替え。今日は彼氏とデートらしい。1時間後、着替えを終えた娘が二階の部屋から下りてきた。このおめかしがナゼか不可解。どうも本人はおめかしをしているもようなのだが、こちらにはそうは思えないのです。センスがなさすぎるのです。とくに中途半端な丈の白いスカートは耐え難いものがあるのです。まるで、おばさんです。オバタリアンです。17歳には見えません。困ったものです。

 僕はソッと次女に耳打ちをします。

「最近アレか、ああいう丈の白いスカートが流行っているのか」
「べつにー、アレじゃん、組み合わせがヘタなんじゃん。センスがないんじゃん」
「おまえ注意しろよ」
「おとうさんがすれば」
「えっ、おれが・・・」
「だって気になるんでしょ」
「そりゃあ、そうだけど・・・でも、あれで、男は何とも言わないのかね」
「男も格好悪いから仕方ないんじゃん」
「えっ、あいつの彼は、アレか、カッコよくないのか」
「うん」
「なんでそんな奴とつきあっとるのだ」
「知らない、本人に聞けば」
「わ、わかった。それは今度聞こう。今日はとにかく白いスカートだ」

 気がつくと長女はまたまたまた鏡の前に立って、その耐え難い姿を写している。そんなにズーッと見ているのに己のカッコわるさに気づかないとはこれいかに。

「おい、どうでもいいけど、その白いスカートはどうにかしなさい。お前はそれが気に入ってよく履いているようだが、そのスカートは父が見ても格好悪い。そこらのおばさんが履いているのと何もかわらない。あえてそれを狙っているのならそれはそれでいいだろう、でも、お前の場合は違うだろう。なんかイケてると思っているのじゃないかしらん。別 におまえがそういったことに無頓着なら父も何も言わない。でも、見たところお前はカッコを気にしているように思う。カッコを気にするのならキチンと気にしなさい。もっと、己を見なさい、以上」

僕はなんだかこんなことを言っている自分がよくわからなくなり、言い終わると同時に外に散歩に出かけてしまった。

  後で次女に電話をして話を聞いたところによると。あのあと長女は鏡の前から動かなくなってしまったそうだ。そして急にポロポロと涙を流し始めたらしい。ああ、出かけて良かった。その時間がなんと三時間にも及んだという。ああ、恐ろしい。でも次女のフォローにより、次女のコーディネイト(次女はセンスがいいのである)で喜んでデートに出かけたらしい。次女は、あたしの休日を返せ、と電話口で僕に怒っていた。れい の白いスカートは、その後、僕は見ていない。きっと彼女は、二度と履かないだろう。
 僕の方も、もう、彼女のセンスについてはあきらめることにした。ヨカッタヨカッタ。 あーあ、それにしてもこういったことを言ったり書いたりするからオラは娘にいやがられる。オヨヨヨヨヨヨ・・・・・

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