bo-bo-記 rec.0146 01.10.10



土手を走れば・・・」
  


 品川から京浜急行で京急蒲田まで行き、そこから鈍行で二つ目のところに「六郷土手」という駅があります。「六郷土手」はギリギリの東京都23区内、大田区のはずれ、相撲でいうと土俵際の俵の部分で、橋を越えるとそこは川崎です。そこに友人のFが事務所を開きました。

「一度寄ってみて下さい。天気のいい日は富士山が見えますよ」

 そうか富士山がみえるのかぁ、その思いにひかれ、ある日曜日僕はでかけてみることにしました。その日はあいにくの雨でした。下北沢から井の頭線で渋谷、山の手線で品川、そこから京浜急行で六郷土手。約1時間の旅でした。

 僕は久しぶりに会ったFと土手を散歩しました。土手の風景は面白いです。子供を連れた家族がいます。草野球、サッカー、ゴルフ、等スポーツに興じる人々がいます。ラブラブ・チュッチュッのカップルがいます。それらの人々はみんな一様に幸せそうで、笑顔が顔に張り付いています。うらやましいです。それとは反対にもう一方ではその幸せそうな人々を眺めている孤独な人達もいます。どうやら土手というのは普通 の人はあまり溜まりたがらず、幸せそうな人と幸せそうじゃなさそうな人、という両極端な人々が溜まりたがる場所のようです。でも、土手に佇み、風をうけて一人もの思いにふける女性の姿は思わず抱きしめたくなるような風情があります。キュッ。彼女は何を考えているのでしょうか。別 れた彼のこと、それともこれから好きになる人のこと、それともそれとも何も考えないで人に気づかれないようにただオナラをしているだけなのかしらん。スカ〜ッ。まっいいか。

「今度ここまでチャリンコで来てみるよ」
そうFに言うと
「いやー、チャリンコで来たら大変ですよー、下北からじゃー」  
「大丈夫だよ。2時間もあれば着くよ」  
「また肝臓が悪化しますよー」
「もしこれたら、どーする?」  
「土手でフルチン踊り」  
「事務所には大体居るんだよね」  
「土日は必ず居ます。でも、チャリンコでここまでは無理ですよ」

そう言われました。でも、最近はなんとか元気だし、それにフルチン踊りも興味があるし、ちょっとチャレンジしてみようかなぁ、そう思い1週間後の日曜日僕はチャリンコで家を出ました。 愛車のBianchiに乗って井の頭通 りから環七にでて、そのまま大森方面に向かって飛ばします。日曜の環状七号はとても空いていてカンファタブルです。中原街道にでたらそこを右折します。少し行くと右手に洗足池が現れます。ここら辺りは以前チフス騒ぎで長女が入院していた病院のあるところです。ちょうど一年前の出来事が昨日のことのように思いだされます。この一年、彼女はかなり成長したと思います。それにひきかえ僕は・・・。先を急ぎましょう。中原街道を真っすぐ進むと玉 川にぶちあたります。丸小橋の手前を左折してあとは土手沿いに真っすぐ、川風も僕の見方になってくれて後ろから押してくれます。ふふふ、Fの驚く顔が楽しみです。そして家を出てからナナナント1時間、土手に面 したFの事務所の前に到着。追い風参考とはいえ早い早い。オラの体力も満更ではありません。

 僕は携帯を取り出しFにダイヤルしました。

《ねえ、土手に面した事務所の窓を開けてごらんよ、ビツリクするから》  
僕はFが出たらそう言おうと思い、愛車の前でポーズをとってFが電話に出るのを待ちました。  
「もしもしFですが」  
「もしもしナカジマです」  
「あっ、ドーモドーモこんにちは」  
「あのさぁ、窓を・・・」  
その言葉を食うように、  
「いま長野にいるんです。気持ちイイですよー、長野は。今日は若い女の子と温泉ですー」  
「そ、そう」  
「ナカジマさんは今どこですかー、家ですかー」  
「あっ、うっ、うん、ちょと・・・・」  
「そうですかー、僕は久しぶりにシッポリですー」  
「そ、そーですか、いいですねー、うん、いいねー、ところで今日は事務所には・・・」
「なにいうてまんねん。長野でっせ。若い女の子でっせ。今日は泊まりですわ、温泉、シッポリ、ムレムレですわ」

 いつしかFの言葉は関西弁になっていました。バカを絵に描いたような僕は返す言葉を失い、電話を切り、いま来た道をゆっくりと逆戻りしました。来たときは、1時間だった道程が帰りは2時間もかかってしまいました。おまけに頑張り過ぎが祟ったのか、次の日は肝臓のご機嫌がかなり斜めでした。Fのフルチン踊りも、若い女の子相手の振る舞いチンポに姿をかえたようです。ハァー。秋というのは、空しさがよりいっそう身に沁みます。いいなー、振る舞いチンポ。ヤクルトも優勝が決まった瞬間に渋谷のマークタワーで振る舞いヤクルトをしたとかしなかったとか。オラも何処かで振る舞いたい。そう願う今日このごろ・・・。ハァ・・・・。

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