bo-bo-記 rec.0150 01.10.18



朝の目覚めは波の音で・・・」
  


 僕は性格はひとくちで言うとチャランポランです。だけど意外にキレイ好きで、部屋がキレイじゃないと落ち着きません。それに反して、別 れた前妻はキタナイのが平気な人で、部屋がキタナクないと落ち着かない人でした。もうちょっとキレイにしようよ、じゅうぶんキレイよ、人の価値観はそれぞれです。僕たちはよく後味の悪い言い争いをしました。僕たちが別 れた理由の一つにこの“キレイ”“キタナイ”があったのは事実でした。そして今、僕は“キレイ好き”な僕に輪をかけて“キレイ好き”な細君と一緒になり。前妻はキタナイのが平気な人と一緒になり、その件は丸くおさまりました。メデタシ・メデタシ。さて、子供達はどうかといいますと。長女はキレイ好き。次女はキレイ好きの片付け下手。長男はキタナイのが平気な片付け下手。それぞれ違います。我が家で一緒に暮らしている長女と次女の部屋は6畳間です。高校生二人の部屋にしては確かに狭いとは思います。でも上手にキレイに使えば、楽しく使えるハズ。キレイ好きの長女と片付け下手の次女。やはり劣性が強いのでしょうか。部屋の中は、いつ見てもものすごいことになっています。今日もチラリと覗いてみたら、空き巣に入られたように洋服が散乱しています。1週間前のお弁当箱が転がっています。夏に窓から飛び込んで来た蝉がカラカラになって死んでいます。部屋の中はいろんな悪臭が渦を巻いて暴れています。恐ろしいことです。ふと棚に目をやると破壊された目覚まし時計が3っつ、役目を終えてゴロンとしています。たぶん機嫌の悪い朝に壁にぶつけたのでしょう。これはもう使い物にはなりません。どうりでさいきん遅刻が多いはずです。目覚ましなしで起きられるほど彼女達の体内時計はシッカリしていないのです。僕は細君の使っていない方の目覚まし時計(FMラジオ付)をソッと子供達の部屋に置いておきました。この目覚ましはあまりにもアラーム音がうるさいために細君は、腹だが立つ、と言って目覚ましとしては使わなくなってしまったのです。でもそれぐらいの爆音でないと、朝なかなか起きない彼女達には太刀打ちできないでしょう。この目覚ましは、我が家の高校生にはうってつけです。ああ、なんという優しい親心でしょうか、健気な自分に思わず涙がこぼれます。グビン。 さて次の日の朝です。次女が時間どおりに6時30分に起きてきました。

「おとーさん、オハヨー」  
「おはよう」  
「ねえねえ、新しい目覚まし時計置いてくれたのおとーさん?」  
「ああ、でもあれは細君のだからお礼は細君に言いなさい」  
「わかりました。でもあの目覚ましはいいね」  
「なにが?」  
「アラームが普通のとちがうの」  
「音がでかいんだろう」  
「ううん、すごく優しいアラームなの」  
「えっ、そうだったっけ?」  
「うん、アラームが波の音なの。ほら、わたし去年まで千葉の海にいたジャン。だから毎朝波の音聞いてたからサァ。それ思い出して、朝からいい気分だよ」
「それはロマンチックな時計だなぁ。でも、波の音なんかあったっけ?」  
「うん、ザザーッ、ザザーッてあれはどこの海の音かなぁ?」
「ホントに波の音?」  
「うん」  
「ちょっとサァ、目覚まし持って来てみい」  
「わかった」  
次女はパジャマの裾をひきずりながら目覚ましを取りに行きました。  
「はい」  
次女が持ってきたのはまぎれもなく細君の爆音目覚ましでした。
僕は時計を裏返して見ました。
そこにはAUTO、ブザー、FM、OFFとありました。  
「おまえサァ」  
「なーに?」  
「それ波の音ちゃうよ」  
「えっ、どういうこと?」  
「それなぁ、FMラジオや」  
「ラジオ?」  
「うん。あのな、この時計はナ、FMいうところにセットしておくとブザーのかわりにラジオが点くんや、そやからキサマが聞いたんは、波の音やのうて、FMラジオの周波数の音や、ザーザーいう。」
「ヒ、ヒェー!わたしゃ千葉の海の音かと思っとったー!」  
「アホやなー」  
「うちアホやー」
「ハハハハハハハハハハ・・・・・・・・」  

とある10月の朝、なぜか突然に関西弁になる親子なのでしたマル。

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