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◎古田敦也・周防正行『古田式』(太田出版)
P10
古田―僕も、どうやったら野球がうまくなるかと、よく聞かれますが、だいたい答えるのは、野球にはコツが絶対あると。野球は、打つ、投げる、走るなど、動作が多い難しいスポーツです。でも、どの動作においてもコツがある。そのコツを見つけるか、見つけないかが問題。それを猛練習の末に見つけるか、たまたま偶然見つけるか、いずれにしても、そのコツを見つけた人が早くうまくなる。
N:そうなのよね。うまくなる方法なんてないのよね。何事もコツなのよね。僕がよく人に言うのは、己の“負けのパターン”を知るということ。これもひとつのコツかしらん。
P74
チャンスは平等にはないけど、みんなにある。
N:いや、平等にないのかなー、チャンスは。仕事にはないかもしれないけれど、長い人生においては、僕はあるような気がするなー。ようはそれを本人がチャンスだということに気がついていないだけでは・・・・・。
◎辺見庸『眼の探索』(朝日新聞社)
P25
埴谷雄高は生前「闇の中から光りに入って、光りに入ってまた闇に中に入っていく。これが人間なんですよ、あなた」(『埴谷雄高独白「死霊」の世界』NHK出版)と語った。
N:あー!恐ろしかー!我が人生!!
◎ビートたけし編集長『コマネチ!2』(新潮ムック)
P143
「役者に倒れる位置を細かく言うと、撃たれた後、ううっ、といいながら倒れる場所を目を開いて確認してからその場所に倒れることがあって、コントみたいになる」
N:二十代の頃、僕は日本テレビの「あぶない!刑事」という番組にゲスト出演しました。
その日は、殺人犯役の人が殺されるシーンを撮る日で、その殺される人は悪役で有名なHさんという俳優さんでした。この方、頗るいい人なのですが、些かお芝居が大きいのでも有名でした。
当日の撮影場所は調布にあるにっかつ撮影所でした。
僕は撮影所へ向かう途中の車の中にいました。場所は京王線の布多駅の開かずの踏切。電車の通
過待ちをしていました。ふと、後ろの車が気になり、振り返りました。そこには、もの凄い形相のHさんが車のハンドルを握りしめて、のたうちまわっているではありませんか。
“どうしたんだろう、気分でも悪いのかしらん。車から下りていってどうしたのか、聞いてみようかしらん。”
僕はそう思っていました。
だけど、
“待てよ、ひょっとして、あれは、死ぬ演技の予行演習ではないだろうか・・・・、そうだ!きっと、そうに違いない!いや、そうに決まってる!そうでないと、あんな形相はおかしい。まるでカバが腹筋をさせられれいるような顔をしているのだから・・・・。そうだとしたら下手に声なんかかけては失礼にあたります。そっとしてきましょう”
そう、思い返したのでした。
それにしても、この踏切が開くまでの長い時間、Hさんはいろいろな百面相で僕を楽しませてくれました。カバの腹筋、ゴリラの背筋、サイの腕立て、人はいろんな表情をつくることができるのものだと、ひとりゴチたのでした。
で、でもです。本当にあんなカバの腹筋のような顔で人は死ぬのだろうか・・・・。リアリズムはいずこへ・・・、僕は心の中で一つの疑問が拡がっていったのも事実でした。
さて、本番のときがやって来ました。
Hさんの顔は異常に赤くなり、目の中の白い部分には、赤いイナズマが入り始めました。Hさんは台本をソッと地ベタに置き、カメラの前に立ちました。
監督の声が響きます。
「よーい」
そして、Hさんにひとこと言います。
「Hよ。ここはリアリズムや、あっさり死んでくれ」
僕は、Hさんの目が、な、なななな、なんで!と訴えるのを聞きました。
監督の声が再び響きます。
「ス、スタート!」
カチンコが打たれます。
銃の発砲音が轟きます。
コテリン。
Hさんはカメラに背を向けて、丸まるように死んで行きました。
いとも簡単にHさんは殺されてしまったのです。
あんなに練習をしたカバの腹筋のような顔でのたうちまわることもなく、Hさんの演技は終了したのです。
「カーット!」
監督の声が響きます。
「オッケー!」
現場の空気が解けて行くのが分かります。
と、その中でHさんの身体だけは、まだ緊張を持続していました。僕は回り込んでHさんの顔を覗き込みました。
そこにはあのカバの腹筋顔が・・・。
そうなのです、Hさんは「カット!」の声がかかってから自分の創ってきた演技を、自分だけを納得させるために続けて演っていたのです。
悲しいかな殺られ役、素晴らしいかなリアリズム。
僕の心の中では「矛盾」と言う言葉がいつまでもズームアップされていったのでした。
P149
アメリカではアフレコが基本なのであまり音を気にしないが、北野組は同録が基本。
「音を気にしちゃうと芝居があせってきちゃうんだよね」と監督。
N:たしかにそうです。音を気にするとセリフは言えなくなります。なんでだろう。きっと、耳に集中しすぎるからだと思うのですが。耳に集中しすぎると、どうして口が開かなくなるかはよくわかりません。でも、だいたい役者のNGの原因はここにるような気がします。
P279
たけし―親子の関係って、一度切ってからまた作り直さないといけないのかも知れない。いつまでも、親が子供のことを上から見ている関係を続けてたらダメなんじゃないかな。親が死んだら、子供は自分で生きてかなきゃいけないわけだから、早めに切れた関係にしておかないと、その後で、もし何かあったら、その時はフォローすればいいんだから。
N:「その時はファローすればいいんだから」とか言うけれど、その時、あんたが死んでいたら、どうフォローするの、ってことになる。僕は早くに両親を亡くしたので切れた関係を早くに体験できた。でも、誰もフォローはしてくれなかった。そのため精神がかなり壊れてしまった。どうしよう・・・。
◎立川談志『談志受け咄』(三一書房)
P32
人間を作るのは「刑務所」と「大病」だ、と誰かが言っていた。
N:やっぱり「苦労」をしないと「楽」はないと言うことなのね。でも、やはり「苦労」は嫌だよ、苦しいからね。でもそうすると「楽」はない。うーん、どっちがいい?
◎水木しげる『ねぼけ人生』(筑摩書房)
P13
その頃、家の二階に下宿していた親類のおじさんと親父は非常に意気投合していた。このおじさんは、一生涯、英語の原書を読む以外何もしないですごしたという奇人だった。親父とおじさんは、金持ちの親戚
の家を廻っては「金儲けがいかに愚劣であるか」ということを説いて歩くことをヨロコビとしていた。二人で、金持ちの親戚
を前にして、富をあざ笑い、成功をののしる、というバカなことをやって、逆に、陰では親類中の笑い者になっていた。
N:この二人の“富をあざ笑い、成功をののしる”パワーはどこにあるのだろうか。こんな一銭にもならないことに力を費やすには相当の理由があるハズだ。僕も昔よくやったことがあるが、それでもわざわざ出向くことはなかった。たまたまその場にいる人間を自分の虫の居所が悪いからといって罵倒していたにすぎない。ああ、でも今思い返すと悪いことをしたなぁと思う。ごめんなさい。
P110
母は、僕の仕事についても心配していて、「お前は孤独に強いから、灯台守りなんかどうか」
とも言った。 しかし、僕は、ねむたがりだし、灯台守りはむかないと思った。
N:そうか、孤独に強い人は灯台守りにいいのか。僕は孤独は好きだが、強くはない。きっと、灯台守りなんかしていたら、そのうち発狂してしまうに違いない。怖い怖い。
P161
その頃の僕の趣味は、金がかかるものでは(といっても大したことはないが)軍艦模型作り、金のかからないものでは、墓めぐりだった。
N:たしかに墓めぐりには金がかからないけれど、はたして楽しいのだろうか。僕はあまり好きではない。僕の好きなのは神社と教会めぐり。それも、どこが楽しいのかわからない、とよく言われるが。楽しいのです、これが、うふふふふふ・・・・。
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