bo-bo-記 rec.0162 02.5.7



抜き書き―『映画に憑かれて浦山桐郎』」
  


◎原一男編『インタビュードキュメンタリー/映画に憑かれて浦山桐郎」(現代書館)

P43
新城:「たえず助監督は勉強だ。電車に乗った時も、座ってボケッと寝てんじゃない。前の男と女を見ろ。あの男と女できてるか、できてないのか、おまえどう思う?」「どうですかね?」「どうですかね、じゃないんだよ。じっと見とけ。仕草ひとつで分かるんだ」と。それが、やがては映画やる時に通 用するんだ、と。電車乗る時ぐらい、いいじゃないですか、なんて思ったんだけどさ。たしかにそうなんだよ、そのことは。〜」

N:映画監督:新城卓の章で。
僕も若い俳優さんたちに、とにかくいつどんなときでも人を見て、そしてその人の意識がどうなっているのか探りなさいと、口を酸っぱくして言っています。でも、本当に口が酸っぱくなったことはありません、なぜかしらん。なを、この本は映画監督故浦山桐郎を彼と係わりのあった人々が語るインタビュー集です。かなり読みごたえのある一冊になっています。

P63
河原崎:〜松村禎三さんたちが「浦さんの最後を見よう」ってね、こうやって棺の蓋を開けて覗いたわけ。そしたらね、浦さんがジッとこうやって自分たちのほうを見てたって言うの。松村禎三さんなんかもね「やっぱり監督ってのは自分のことをどう思ってるのかをね、死後も気になって、みんなのほうを見てた」って言うわけ。そんなことがありましたね。
〜中略〜
河原崎:浦さんがよく言ってたんだけども、淳子さんとこにいると重森さんに悪いなと思う。で、重森さんとこにいるとね、淳子さんに悪いなと思うんだって。「だから俺はね、帰りの車の中だけだよ、ホッとするのは」って言ってたのはよく覚えてるんだけども。

N:俳優の河原崎長一郎さんの章で。
淳子さんというのは浦山さんの本妻。重森さんというのは愛人の脚本家、重森孝子さんのこと。それにしても、あちらこちらイノチガケですなあー。タイヘンタイヘン。

P87
美枝子:〈複眼凝視〉ってあれがすっごくあたしにとっては参考になったというか、一つの角度だけでものを見ないで、いろんな角度でものを見ながら生きていこうっていう。誰かにお会いしてもここだけ見るんじゃなくて、裏っかわから見てみようかとか、そういうちょっとしたことができるようになったかなあ、っていう気もしますね。

N:浦山桐郎の妹、鈴木美枝子の章で。
〈複眼凝視〉か・・・。聞くところによりますと、たしかこの言葉が浦山さんのお墓にバーンと掘ってあるそうです。凄いです。

P142
小原:イマヘイさんの伝統というか、日本人のふてぶてしさ、大根足の女、ずんどうの腰には命の源泉があると。「持ってるものをなんで出さないんだ。かっこつけるからだろう」って。そういう人物を見抜く力はすごかったですよ。
〜中略〜
生活とか性格を全部見つめながら引き出していく。いまの時代じゃとてもできない芸当ですよね。

N:映画監督、小原宏裕(こうゆう)の章で。
そうかなぁ・・・、できないかなぁ・・・・僕はこれをやろうとしているんだけどなぁ・・・・・やっぱりムリなのかぁ・・・・・・でもなぁ・・・・・・・生活とか性格を見つめながら、その人を引き出していかないと、表現として成立しなくなってしまうんだけどなぁ・・・・・・・。

P153
大空:うまい下手の問題じゃない、うまくやろうと思う気持ちが見えたら、もうダメだって。それはすっごい分かるんだけど、どうしていいか分かんないの。

N:女優、大空眞弓の章で。
意識ですね、意識。役を作ろうという意識は棄てて、その役の人間が自分なんだという意識にもっていけばいいと思うのです。まぁ、それが難しいのだけれどこ・・・・。

P173
西河:〜つまり耳から入る音楽が好きだっていうことは、極端に言えば音に関する聴覚記憶力にすぐれた体質を持っているんですよ。ところがこういう人は絵がぜんぜん描けない。絵コンテで描いたりするとヘタなんですね。ということは、視覚連想力とか視覚記憶力がいい人が監督にいいんです。典型的なのが黒澤明ですね。市川崑とかもね。こういうタイプの人は、みんな視覚記憶力が非常にいいんですよ。パッと見た時に、あれがこうなってた、パッ、パッ、パッと思いつくんですね。僕にはそういう持論があるんです。そのダメタイプのほうに浦山も入るんですね。視覚記憶力が非常に弱いというタイプ。

N:映画監督、西河克己さんの章で。
僕の演出はどらかというと聴覚記憶力に頼る方だと思います。音楽の記憶を頼りにいろいろなイメージを膨らませたり、記憶を掘り起こしたりします。ですからついつい音楽を使い過ぎてしまいますが、音の使い方はウマイです。自画自賛金。

P233
原:浦さんは監督として、決して恵まれたほうじゃないですよね、本数も少ないし。
鈴木:いや、それは自分で選んだ道ですから、そんなことしょうがないですよ。普通 に日活で娯楽映画撮ってりゃ、なんてことないんだけども、自分はそういうもんを嫌ってね、人間を見つめるっていうのかな、そういう道のほうを好んだわけですからね、そりゃしょうがないですね。娯楽映画撮れ撮れったって、撮れないでしょうね、あの人には。

N:映画監督、鈴木清順の章で。
そういう鈴木さんだって娯楽映画は撮れないと思うなぁ。本人は娯楽映画と思っているかもしれないけれど、鈴木さんの映画はあくまで、清順印なのですー。
以前、僕は俳優鈴木清順さんと共演させてもらったことがあります。そのとき博奕の話しになり、清順さんはまったくもって博才がないとおっしゃるので、まあ清順さんにとっては映画や人生が博奕みたいなものですからねと、僕が言いました。すると、失礼な!と言って顔を真っ赤にしてお怒りになられたことがありました。懐かしい。

P241
和泉:〜もう一つ好きなとこはラストシーンなんです。
〜中略〜
あそこ、浦さんの素晴らしいと思ったとこなんですけどね、キャラメル食べさしたんです、私に。ものを食べると人間は本性にかえるんですよね(笑)。

N:女優、和泉雅子の章で。「非行少女」に主演したときのお話し。
ああ、そうですよね。ものを食べると人間は本性にかえりますね。今度、演技クラスでやってみよう。

P246
小林:〜それでいちばん言われたことは「とにかくおまえは撮影所にいちばん早く行け」「セットをまず見ろ」「おまえに何ができるか、セットの中に座っててみろ」って言われましたよね。これはいまでもすごく大事なことだなあと思ってます。よかったと思ってます。ありがたかったことですね。
〜中略〜
小林:〜もう絶対できないですね。あんな仕事は。
原:絶対にですか?
小林:はい、絶対にです。あえて言いますね。やはりいろんなこと分かってきましたし、分かってくるってことはプラスにもなるけど、マイナスにもなりますよね。

N:女優、小林トシ江の章で、主演した「私が棄てた女」のときのお話し。
監督と女優のいい関係ですよね。お互い四つに組んで表現に取り組んでいる感じがいたします。浦山(うらやま)しい・・・なんちゃって。

P352
佐藤:〜やっぱり死を感動的に描くためには、生が感動的じゃないと面白くないわけですよね。

N:プロデューサー、佐藤雅夫の章で。
負をキチンと描かないと絶対に正は描けないことと同じですよね。あと、自分の嫌な部分をキチンと見つめていかないと、絶対に自分の良い部分は表に出てきません。だからみなさん、自分の嫌な部分を恐れずに見つめていきましょう。ガンバレー。

P366
〜「山道ば歩いて、一銭も金貸してもらえんこともあったとばい」っていうところなんかは、ずっと泣きながら言うんですけど、カットかかっても、まだ泣いてなくちゃいけない。いまだったらお休みしたりできるんだけど、その時はなにも分からないから、カットかかってもその気持ちを持続するために、ずっと泣いてたんですよ、そうすると浦山さんが、「100万や200万の役者がやってんじゃないんだぞ。素人が演技してんだから早くしろ!」って怒鳴ったんです。「私のこと言ってるんだろうな」って思うんだけど、でも私は織江さんの気持ちでいなくちゃいけないんだと思うから、ずっと泣きっぱなしで、照明さんの紙の音とかそういう音しかしなくて、シーンとした中で自分の泣き声だけが「エッ、エッ、エッ」ってあって、「はい、次のカットいきます」っていう感じで、監督の「アイッ!」っていう声が響くっていう感じでしたね。そうすると、どんどん緊張する空気がセットにただよって、ますます神経は集中するから、「ああ、映画はすごいんだな」って思いました。
〜中略〜
〜「野麦峠」の撮影の時に〜略〜浦山さんのところへ電話して、「どうやっていいか分からない」って言ったら、「おまえはいつも主役をやったりして、自分が目立つような役ばっかりやってるけども、今回はそういう映画じゃないんだから、相手をちゃんと立てなさい」って。「ちゃんと、風感じたり、山の緑を見たり、雲の冷たさを感じたり、それだけでいいんだから」って言って、「相手が立つように、相手がしやすいように芝居をしなさい」ってクランクインの前にそう言ってくださって。

N:女優、大竹しのぶの章で。前半は「青春の門」のときのお話し。後半は「ああ、野麦峠」(山本薩夫監督)のときのお話し。 大竹さんは本当にいい経験をしていらっしゃいますね。デビュー作で浦山監督に巡り逢ったことが彼女のその後を決めたような気がします。

 

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