bo-bo-記 rec.0083 00.11.28



エンゲキ=[mne.george]のころ(10)」
  


 カフェ・バー「X」のオープニングの日。僕はつまらないことで悩んでいた。実は昔からパーティーと名のつく場が大嫌いなのだ。今までもそういったパーティーには数えるほどしか出席したことがない。大体において自分の出演したドラマの打ち上げですら出ない人なのである。しかし今回はプロデューサーでもあるFのお店、それももうすぐ僕たちのエンゲキの本番が行われる場所のオープニングだ。なかなか断りづらい。そういえば恵比須にあるF達のお店「P」のオープニングに僕は偶然行っているのだ。「P」の名付け親のユッカちゃんに誘われて、Yと言うこれまたユッカちゃんの知り合いの男と一緒に行ったのだ。そのときはYと二人で、なんてスノッブなお店だべさー、客も経営者もスノッブ過ぎるだべさー、と言い合っていた記憶がある。その後、Yと僕はあるお芝居を造ろうとして挫折。もう表現なんてこりごりだべさー、と思っていたところにFからお呼びがかかり、新しくオープンする「X」で公演を打つことになった。「X」の名前を考えたのはこれまたユッカちゃん。気が付いたら僕はもうスノッブのしがらみに取り込まれてしまっていたのだべさー。で、パーティーだ。そもそもいつの頃からパーティーと言うものが日本でもとりおこなわれるようになっってしまったのか。猫も杓子も何かあると、パーティー、パーティーといっては酒を飲んで、見知らぬ 人と出会い、それをキッカケにお仕事かオ○ンコをいたす。いいのかそれで!そんなことでお前らの人生いいのか!何ともうらやましい限りである。オラはこういった社交辞令的なコトがものすごくダメなのである。どこかでイイナーと思ってはいても、器用に人と楽しく会話が出来ないのだ。まず酒が飲めない、気の利いた趣味がない、女の子におべっかを使えない、の三重苦である。ついつい“壁の花”ならず“壁の染み”と化してしまう。“染み”なら“染み”であきらめて“染みの権化”にでもなればいいのだが。あくまで人に対する妬みは人一倍強いので、若くて可愛いい女の子をモノにしている輩を見るとギリギリとしてしまう。それでよけい虚しい思いになり、家に帰って枕を濡らすのだ。悲しいことです。というわけで「X」のオープニング・パーティーも悩みに悩んだ末、行かない事にしてしまった。ああ、スッキリ。と思いきや、これはこれで何もスッキリはせず。悪いことしちゃったかなあぁ、やっぱり行けばよかったかなぁ、と家で悔やむのだ。これまた悲しいことです。どっちにしろ悲しいことになるのだ。ハハハハ、バカな奴だ。

◆  ◆  ◆   ◆ 

「アンナが芝居の本番に出ないって言ってますけど、本当ですか。」

その日、パーティーに出ていた本石君から電話があった。   

「なになに、それ、どういうこと。」

僕は彼が何を言っているのかわからなかった。

「今パーティーでアンナと会ったんですけど。もう本番には出ないって言ってるんですよ。」 

「な、なんで。」

「だから今電話してるんじゃないですか。」

「オ、オレは何も聞いていないぞ。Fはどうしてる。そこにいるんだろ。何かかわった様子はないか。」

「キレイなお姉ちゃんと楽しそうにお話ししています。いつもよりアゴが尖って見えます。」

「それは欲情してる証拠だ。あいつは欲情するとアゴが尖ってくる。下半身はきっとスゴイことになっているだろう。」

「本当ですか。」

「ウソだ。それよりその話、ほかのメンバーには話すなよ。噂が一人歩きするのがいちばんこわい。」

「わかりました。」

「とにかく教えてくれてありがとう。パーティーはどう。」

「最高ですよ。アメリカなんかカウンターの中でブルンブルンしています。」

「えっ、カウンターでか。」

「はい、かなり乱れています。」

「そこのカウンター、芝居でも使うんだから、あまり汚さないでほしいなぁ。」

「あっ、手遅れです。もう、汚れ過ぎて居ます。」

「そ、そう。悲しいね。」

「僕は、楽しいです。」

「そ、そう。じゃあ、また稽古場で。」

僕は電話を切った。ちくしょう、うらやましい、今夜はきっとみんな酒池肉林だろう。オラも行っていればお相伴に預かれたかもしれない。。。。そうだ!今から行くか!!!・・・・やめとこう、きっと死にたくなる。それよりアンナだ。なんだ、本番に出ないってどういうことだ。僕は考えてみた。昨日までのアンナは順調だったぞ、とてもイイ感じできてたぞ、なにがイヤなんだ、共演者がいやなのか、オラのことがイヤなのか、ひょっとしてアゴがセクハラ・・・・。僕はパーティー会場に電話をしてFを呼び出してもらった。   

「もし、もし。」

電話にでたのはノブ子だった。

「もしもしFいる。」   

「すみません、今ちょっと手が離せないので話を聞いてこいと言われまして。」

「アンナが本番に出ないって言ってるそうだが何か聞いているか。」   

「ぎぇ、本当ですか。」   

「なんちゅう声を出しとるのだ。本当だ。本石からいま電話あった。」   

「私は聞いていません。Fも多分聞いていないと思います。」   

「そうか、明日ちょっとミーティングしよう。」

「わかりました。」   

「ところでFのアゴは尖っているか。」   

「ええ、この上なく。」   

「そうか、うらやましいな。」   

「今から来ますか。」   

「いい、きっと虚しくなる。」   

「そうですか、じゃあ明日。」

ちくしょう、なんでもう一押ししてくれないのだ。もう一押ししてくれれば行かないでもなかったのに、気の利かない女じゃ。グダグダグダグダいまだに言っているおのれが本当に悲しくなってきた。ちょっと待て。オレはもっと違うことで悩んでいたのではなかったか。おお、そうじゃ、アンナじゃ、一体全体どうしたというのじゃ、何があったというのじゃ。そこへまたまた電話が鳴った。   

「もしもし。」

おらの声にかぶさるように女の声が飛び込んで来た。   

「もしもしアンナです。なんだか、、、もう死にたい。。。。。」

オイオイなんだか事態は青春ドラマのようになってきた。
本番まであと二週間である。

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