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bo-bo-記 rec.0091 00.12.15 「エンゲキ=[mne.george]のころ(18)」 |
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おお、久しぶりの熱血先生だ。背筋が寒くなる、オラだった。 その日から始まった個別稽古の内容はこんな感じだった。役名トシ、ヤス、理人、想、にとって、mne.georgeの存在は何だったのか、自分のアイデンティティーを脅かす女性ってなんだろう。mne.georgeの死体に直面 した彼らはどんな反応をしたのか。きっとそれは彼らが女性に持つ、または母親に持つトラウマに近いモノが出てくるハズ。もちろん、そんな場面 など芝居の中にはない。だけどそこらの歴史をキチンとしておかないと、板の上の彼らの存在が希薄になってしまうだろう。ひとりひとり順番に稽古は始まった。mne.georgeの死体にはアンナになってもらった。 まずは役名ヤスこと本石君とmne.george。 何度も繰り返しやるほどに彼の恐怖心が増していき、最後は震えながら泣いていた。恋愛なんかしたことがない、そういう本石君の言葉どうり、彼はどこかで女性に対して怯えているのだ。最後までmne.georgeの死体に触ることはなかった。 次の日は理人役の静岡君。死体の上に跨がってしがみついて離れなくなってしまった。稽古中にもかかわらず、しがみつかれたアンナが困った顔でこちらに目線を送ってくる。よく見ると静岡君の腰が動いている。きっと、勃起しているのだろう。ソコをアンナの恥骨にこすりつけている。止めようと思い、静岡を見ると哭いている。指を噛んで女のように哭いている。見ていたトシは感動のあまりプルプルしている。まるで代々木忠のビデオのようだ。観念したかのようにアンナも静かに目を瞑る。オイオイ、そんなの有りか、お前たち。ここで始めるのか。即席ではあるが誰も入り込めないディープな愛がソコにあった。僕は部屋の明かりを消してあげた。月明かりが窓から入り二人に注がれた。既に静岡君の腰は動きをやめていた。いつの間にか二人は眠りについしまったようで、微かに寝息が聞こえていた。 問題は武蔵野君だった。この男、よほどガードが固いのか、恥ずかしがって何も反応を示そうとしないのである。付き合っている女にもきっと自分の本当の姿なんぞ見せたことないに違いない。動かざること山のごとし。ただ、死体を前に、ジッとしているだけだ。こうなれば、根競べだ。僕もジッと待つこと三日間。ようやく山が動いた。ゆっくりベルトをズボンから外し、バックルが外にくるように、先端の方を握り締め、遠心力に任せてそのまま勢いよく振り下ろした。バックルが死体役のアンナの顔をかすめ壁にぶつかった。それから、何度も何度も振り下ろされた。武蔵野の目から涙が迸り、鼻からは鼻水と鼻血が流れだし、壁には穴が空いた。室内なのに、まるで武蔵野の身体に激しい雨が襲いかかっているようだった。
あまりの汚らしさに僕とトシは口から声にならない音を出した。 最後はトシだ。トシにはもう一つ付け加える事があった。mne.georgeの死体を見た後でトシは自分も首を括らなくてはならない。これが非常に難しい。それも演じるのはクササの極致のトシだ。でもそのために個別 稽古に付き合わせて来たのだ。やって貰わねば。 ある日トシヤは都会の公園で、一人寂しく、空虚な時間を垂れ流していた。どれくらい垂れ流していただろうか。気がつくと向かいのベンチで同じように孤独を垂れ流している女の子を見つけた。お互い垂れ流しているモノを救いとってあげようとするまでに、そんなに時間はかからなかった。二人ともなんとなく公園で会うようになり、帰りはいつもトシヤが彼女を送っていった。でも決してトシヤが彼女の部屋に入るようなことはなかった。その日トシヤはとてもヘンだった。この世界の捩れに身体も心も捩込まれてしまっていた。彼女に会いたい。トシヤは彼女の部屋へ行った。彼女は幸せそうに首を括っていた。死体がなにか歌のようなモノを口ずさんでいる。トシヤもつられて歌う。歌いながらポケットからナイフを取り出し。彼女の唇を切り取る。切り取られた唇は歌うことをやめない。トシヤは唇をソッとハンカチに包み、ポケットに入れた。そのまま唇と一緒に街を歩くトシヤ。そして自分のアパートに戻り、首に紐を巻つける。少しだけ幸せそうに・・・・。 トシはしっかりトシヤを演じた。少しもクササはなく、見ていた僕は彼の出すナニカにものすごく自分のナニカを揺さぶられた。クサくない。あのトシがクサくない。トシが最後の最後に間に合ってくれた。クサくない。それどころかスゴイ。しかしだ、なぜか稽古場がクサいのだ。強烈な匂いが鼻を突き刺してくる。見るとトシが失禁していた。ズボンのあそこの場所が染みている。芝居のクサさが折角消えたのに違う意味で臭い男になってしまっていた。僕は芝居の稽古でお漏らしする人間に生まれて初めて出会った。トシは結局最後までクサかった。そしていろんな意味でスゴかった。 明日はゲネプロ。本番どうりに行う僕たちの最後の稽古である。 →next rec. |
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