|
■ I
女の子のほしいものならすぐわかる。
自分がもらってうれしいものを数え上げていけばいいんだもの。
きれいなお花もいいし、きらきら光る石もすてき。
空色のバッグも捨てがたいし、ぴかぴかオレンジのパスケースもいいな。
冬ならふわふわの手袋、夏ならおちゃめなキャラクター入りの扇子もいいかも。
もちろん、おいしいって評判のケーキも最高。
でも、男の子のほしいものって?
ましてや、学校の、地球の男の子じゃない場合は?
バァンは、どんなものをあげたら喜んでくれるんだろう?
ここガイアでも「誕生日を祝う」という習慣があることを知って以来、それなら、バァンのお誕生日にはきっと自分もお祝いしてあげよう、と心に決めていたひとみは、その日が近くなると意気揚揚とプレゼントを用意し…ようとした。
が。
困ったことに、そもそも何をあげたらいいものか、皆目検討がつかないのだ。
バァンって…何をあげたら喜ぶんだろ?
彼の誕生日が間近に迫ったその夜も、ベッドの上で大きな枕を抱えて、ひとみは頭をひねりつづけていたが、どんなに考えてもいいものが思いつかない。
とりあえず参考に、今まで男の子にプレゼントしてきたものを思い浮かべることにした。
といっても、弟と、小学生のときにちょっと人気のあったクラスの男の子だけだから、ろくなものがないのだけれど。
おまけつきのお菓子とか(もちろんメインはおまけ)、TVアニメのステッカーとか…ああ、弟が好きだって言うサッカー選手の写真が入った雑誌のポスターを、本屋のおじさんに頼み込んでもらってきたこともあったっけ。
もちろん、ガイアにはおまけつきお菓子なんかないし、本屋もない。
第一、あったとしたって、そんな子供じみたものをバァンが喜ぶとは到底思えない。
それじゃあ、対象年齢をあげて…そうだ、天野先輩のお誕生日には、何をあげようと思ってたんだっけ?
ひとみは、かつて誰よりあこがれていた人のことを久しぶりに思い出した。
かっこよくって、何事にも一生懸命で、何より思いやりがあって。いつでも笑顔で優しかったひと。
そこまで思って、ひとみはくすりと笑みをもらした。
バァンとは、ぜんぜん違うのに。
天野先輩は、どちらかっていうと、アレンさんよね。
アレンさんも、かっこよくて、いつも優しくて。いっしょにいると安心できて。やっぱり大人なのかな。
それに引き換えバァンときたら、いつも無愛想で、何を考えているんだかわからなくって、大事なことは何にも言わないし。無茶ばっかりして心配ばかりさせて。こっちの気持ちなんてぜんぜん考えてないんだから。
心配で、気になって、どきどきして、仕方ないのに。
あいつったら、全然わかってないんだから。
ぶっきらぼうに空を見上げる横顔と暗赤色の瞳を思い出してしばらくぼうっとしていたひとみは、「いけない、いけない、考えなきゃ」と頭を振って、それから枕に顔をうずめた。ほほに触れる布がすこしひんやり感じるのは、自分の顔が少し火照っているからだ、ということには気が付かないふりをすることにした。
「えーと、だから、天野先輩に何をあげようとしてたかったいうと…」
ひとみは、天野の誕生日の間際に今と同じようにあれこれと悩んだことを思い出していた。夕焼けの下、海を見下ろす階段、いつもの帰り道。
|